こんにちは、田中です。
本日は【子供の発育・発達とスポーツ】の2回目です。
今日は、幼児期・児童期にどんな運動をするのが効率的かというお話。
前回もお話ししたとおり、どの年代でどの体力要素の向上にフォーカスするか、適切な順序があります。
とくに複数の年代(小学校低学年・高学年など)をまたいでアスリートに携わる人にとっては重要です。
幼児期における身体活動
この年代の子供に、形式的な「練習」を行う事は効果的ではないですよね。
しかし、この年頃の子供たちは既に、体育遊びをとおして体の使い方を学んでいます。

体の使い方とは「走る・跳ぶ・投げる方向転換」などです。
これらは、スポーツにおいては基礎的な動作スキルになります。
全力で動くことで発達が促される
この時期に大切な事は、子供たちがアクティビティに全力で取り組めるよう工夫する事です。
全力での体力あそびは、筋力や全身持久力を向上します。
ゲーム性や競争を取り入れた楽しい遊びをしましょう。
例えばボール投げ。
この年代の子供はまだ、巧緻性(細かい動作)の面では大人と同じことは出来ません。
まずは目標に向かって正確になげる練習より、だれがより遠くに飛ばせるかのゲームをしましょう。
全力でボールを飛ばすゲームは、大人でも相当体力を使いますよね?
その負荷が子供たちの全身持久力と筋力を高めてくれます。
この期間の身体発達は目を見張るものがあります。
小学校にあがる頃には、大人顔負けの運動が出来るからです。
児童期の運動
小学校低学年は、幼児期の延長にはありますが、トレーナビリティはそれ以前より高くなります。
基本的には、ゲーム性のある活動によって動作を習得したり、自信や自己肯定感を高めてあげたいですね。
この時期はマルチスポーツ(複数のスポーツに取り組む事)が推奨されます。
特定の競技動作ばかりを繰り返すよりは、さまざまな動作パターンを身に着けましょう。
スポーツ万能型の選手の方が応用力が高く、後に特定の競技に専門を絞った時にもトレーニング効果が高いです。
昨今では、早期からエリート教育をする競技種目が多いようです。
早い段階でスキルを習得させてあげれば、プレー面で同年代の子を圧倒できます。
これは自己肯定感を高めてあげられる点で有利です。
一方で心配なこともあります。
決められた特定の練習を繰り返し行えば、大人でもモチベーションが低下するでしょう。
また、年代が上がるにつれて技術力が拮抗し、優位性が薄れてくると、競技への参加意欲が下がります。
バーンアウト(燃え尽き)を起こさないよう、時には違った刺激を与えてあげましょう。

また、特定の動作を過度に繰り返すと、体のアンバランスや故障に繋がります。
この年代の子供たちの発育上の特性を知り、故障に見舞われないよう保護しましょう。
児童期のトレーニングの注意点
児童期の特徴は、以下の通りです。
●細かな動きはまだ出来ない
細かな動きを制御する筋肉は、児童期には充分に発達していません。
また、視覚制御も完全には発達していません。同じように物を見ていないのです。
なので大人は、子供たちが自分と同じような感覚で物事を察知したり運動していると思ってはいけません。
子供は、大人のミニチュア(縮小版)ではなく、大人とは別の運動制御の仕方で動いているのです。
●回数や量は沢山できない
この年代は、少しづつ骨の長さが伸びる時期です。
適切な負荷は、骨や筋、靭帯や腱の発達に良い影響を与えます。
ただ骨の成長点である骨端軟骨に、繰り返し過度な負荷が加わると故障しやすいです。
児童期の動作やスキルのトレーニングは少ない回数で実施するように心がけましょう。
ちなみに、スポーツメディカルに携わっていると、9歳女子のセーバー病や10歳女子のオスグッドにも遭遇する事があります。
7~9歳は、男子であればまだ身長が伸び始める年齢ではないです。
しかし、女子だと10歳くらいでtake off age(身長の急激な伸びが始まる最初の一年)に差し掛かる子もいます。
●体節(頭・体幹・手足)の比率が徐々に変化する
幼児期から児童期のあいだ、頭部は2倍に成長し、体幹部は3倍になります。
上肢(腕)は4倍になり、下肢(脚)は5倍に伸びます。
小学校中~高学年になると手足が長い印象になるのは、このためです。
頭・体幹・手足の位置が、絶えず、徐々に、相対的に変わっていきます。
これが大人のあなたの身に起きたらどんな感覚でしょう?
おそらく正しい運動が行えなくなります。
なので、運動面が3次元になるような運動で空間認知能力を高めると良いでしょう。
また、手足や全身の協調性や連動性・タイミングが必要になる運動も良いです。
これが小学校の体育に縄跳びや器械体操が組み込まれている理由です。
●運動効率が悪いので、リカバリー時間が必要
大人と比べて、手足の長さに対する筋肉量が少ないです。
そのため、大人と同じ運動をしたら、大人より大量の酸素を必要とします。
子供は大人に比べて燃費が悪く、ガス欠を起こしやすいという事を知っておきましょう。
中高生や大人が難なくこなせる内容でも、児童期の子供には困難な場合があります。
生物学的年齢(発達具合を加味した年齢)に応じたインターバルを設けてあげてください。
幼児期~児童期で大切なことは
幼児期・児童期に共通して言えることがあります。
それは、量的なトレーニング(筋力や持久力向上)は効果的ではないという事です。
動きの質を高めるようなトレーニングを行う事が推奨されます。
出来るだけ楽しく基礎的な動作が身につくと良いでしょう。
具体的な内容は、また別の機会に。
できるだけ早く書きたいと思います。
さて、児童期までで結構な文字数になりました。
成長期前期以降については、次回【子供の発育・発達とスポーツ#3】で。
次回も是非お付き合いください。
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