10代前半のチーム育成、難しくないですか?


こんにちは、田中です。

 

今回は、成長期前期におけるトレーニングについてのお話しです。

 

【子供の発達・発育】シリーズの3回目になります。

成長期前期(10~12歳)の子供たちの体と運動にはどんな特徴があるか分かりますか?

 

理解して練習やトレーニングに活かしましょう。

 年代分けについての詳細は、【子供の発達・発育】の1・2回目をご覧ください。

この時期の体と運動の特性

個人差・性差が顕著

個人間の成長速度の差がはっきりしはじめる時期です。

 

12歳の中にも、10歳くらいの体格の子もいれば14歳くらいにあたる子もいます。 

 

また、男子の成長は、女子の成長より1~2年遅いとされます。

体力の消耗が激しい

この時期の子供の特徴として、長時間の継続的な運動は不得意です

 

骨格が長くなっているにも関わらず、成人に比べて筋肉量はまだまだ少ないです。

 

そのため、少ない筋肉で大きな力を発揮する必要があり、運動に大量の酸素を必要とし、はやく消耗します。

練習後、帰宅した時にすごく疲れている選手が多いのではないでしょうか?

 

子供が運動するのに必要な労力は、大人のそれとは比になりません。

 

体力のリカバリーのために、適切な休養・栄養が必要です。

大人よりも暑熱環境に弱い

また、熱の放散についても子供は大人より不利です。

 

想像してみてください。

成長期前期の子供と成人では、皮膚の体表面がより広いのはどちらでしょう?

 

多くの場合、成人だと思います。

皮膚の表面は汗腺など体温調整を司っており、その面積は熱を放散する能力と比例します。

 

つまり、子供はまだ、暑熱環境における高強度や長時間の運動には対応できないのです。

上記の理由から、まだ成人と同じ感覚で運動はできませんので、適切なインターバルや休憩を取る必要があります。

筋肉量はあまり増えないが、筋力は顕著に増大する

この時期は筋力が大幅にアップします。

 

意外かもしれませんが、筋力の伸び率は、成長期の後期(16~18歳)よりも前期(10~12歳)の方が大きいです。

のちの成長期後期の筋力アップは、筋肉量の増加によるものです。

 

一方で前期には、神経学的な発達によって動員できる筋が増える事によるパワーアップが起こります。

パワーの伸びを活かすためには、爆発的な動作のトレーニングが有効です。

 

これについては後述していきます。

 

 

また近年では、成長期におけるレジスタンス・トレーニングは、内容を選んだうえで行った方が良いという研究があります。

トレーニングと練習

基礎的な動作スキルから 競技スキルへ

「しゃがむ・跳ぶ・走る・方向転換」などの基本的な動作を磨く事は、障害予防とパフォーマンスUPに重要です。

 

そして、基礎的な動作スキルから、専門競技に特有の動作に結び付けることが大事です。

アジリティ練習や、ハードルドリル等が基礎動作と競技特有の動作をつなぐものにあたります。

 

なので、これに取り組む前に、スクワットやランジ等の基本的な動作パターンを習得させてあげると良いでしょう。

 

フルスクワット(踵をついたまま最後までしゃがみ切る)が出来ない選手は、みなさんの想像よりはるかに多いです。

また、多面的な動作を行うことで、空間認識能力が高まります。

 

ショートダッシュの際のスタート姿勢を変えてみましょう。

 

後ろ向きから振り返ってスタートする。うつ伏せに寝た姿勢からスタートする、など。

 

様々なバリエーションが出来るはずです。

 

これらは、体勢を変える際の姿勢保持能力も磨いてくれます。

協調性のある動作を獲得

上半身と下半身の連動性を磨いて、上手に動ける選手を目指しましょう。

 

のぼり棒やロープを登ったり、雲梯(うんてい)をすると体の協調性が高まります。

 

スキップやホッピングも良いでしょう。

 

また近年では、アニマルウォークも体の使い方を磨くトレーニングとして注目されています。

これらを運動を行う時は関節可動域を出来るだけ大きく使い、爆発的な動作も行うと良いでしょう。

 

神経系の発達により筋力がアップし、体幹の安定性(姿勢保持能力)も高まります。

そもそも上半身と下半身の協調性とはどういう事でしょうか。

 

たとえば、サッカー選手がボールを蹴る瞬間。

 

下半身と上半身はどのように回旋していますか?

どんなスポーツをするせよ、このような動きの連動が自然に出来る選手の方が、成果を出しやすいでしょう。

爆発的な動作・刺激への反応

爆発的な動作(プライオメトリクス)要素を取り入れましょう。

 

このトレーニングの利点は先述の理由以外にもあります。

力=質量×加速度ですが、スポーツにおける力の発揮は瞬発的であることが多いです。

 

スポーツではどれだけ大きい力を出せるかより、どれだけ素早く力を立ち上げられるかがパフォーマンスを左右します。

 

この年代では、パワーよりも、力の立ち上がり速度を高める方が有利です。

 

この辺りはいずれブログでも詳しくお話しします。

また反応という意味では、アジリティ練習の際のスタートも工夫すると良いと思います。

 

笛の音をきっかけにしてスタートする練習はよく見かけます。

 

他にも、他の選手からタッチされたらスタートする(いつタッチされるかは分からない)なども良いと思います。

力や動きの原理を覚える

子供の頃、スポーツ競技の中で初歩的な力学を教えられた記憶がありますか?

 

例えばこんなこと。

  • バッドを持つとき長く持つのと短く持つのでは、どちらが回転スピードが速いか。
  • 宙返りの際に、伸身で行なうのと膝を抱え込むのではどちらが早く回れるか。
  • ボールに力を伝えたり、相手を押す時は、それに対して一直線(水平方向)に力を加えるほうが強い。

これらは、より効率的に動くために必要です。

 

走る時に肘を伸ばして腕を振る事は(体操競技など速さを競うのでない場合を除いて)力学的に不利でしょう。

 

あえて難しく言えば、質量中心が回転軸に近い方が回転は速いという事です。

 

 

これを理論的に理解する前に、スポーツを通して感覚的に学ぶのは良い事だと思います。

小学校高学年くらいまでには、効率の良い動作スキルを理解し、身に着けられると良いのではないでしょうか。

回数やセット数は少なく

スポーツメディカルの観点からいうと、ケガや故障をさせやすい練習要素があります。

 

同じ動作スキルを過度に反復する事です。

 

骨が長軸上に伸びる時期なので、成長がさかんな点(成長軟骨板の周辺)が力学的にもろいです。

 

そのため、くり返し負荷が加わるとその部分を損傷します。

代表的なものが、セーバー病やオスグッドです。

 

現場の肌感覚としては、女子では10~12歳くらいでの発症が多く、男子はそれより2年遅いと感じています。

 

疫学上は男子の発生率が高いとされますが、最近は性差はあまり感じないような気がします。

 

学習塾やビデオゲームなど、子供の活動性の変化も関係しているように思います。

逆に言えば、この世代の子たちは、爆発的な力の発揮によってケガをする事は少ないです。

 

たとえば、小学生の肉離れってあまり聞かないですよね?

 

なので、次のような要素のある運動を、少ない回数やセット数で、動作パターンを変えながら多種目おこなうと良いと思います。

 

①大きい関節可動域が要求される動作

 

②一瞬で素早く力発揮する動作

 

③協調性やタイミングが求められる動作

最後に私からは、基礎的な運動能力を高めたい選手・チームには、こんな変化を提案してみます。

  • 練習環境が校庭なら、練習前に雲梯(うんてい)やのぼり棒をしてみるのは如何でしょうか。
  • 室内の競技なら、アニマルウォークを取り入れるのも良いでしょう。
  • アジリティやドリル系の練習の時は、頻繁に動作方向や体位が変わるタスクを課してみましょう。
  • スタートのきっかけは笛だけでなく、見えない位置からタッチされたらGOなどもいいですね。

本日の内容は以上です。

 

次回は、成長期中期のスポーツトレーニング【子供の発達・発育#4】です。


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