モモカンって経験したことありますか?
スポーツをしていて、相手選手のヒザなどの硬い部位が、自分の太ももにぶつかるケガのことです。
私は何度か経験しましたが、ものすごーく痛いですよね。
まわりの人が思ってる以上に痛くて、まともに歩けなくなります。
まわりの人からは大袈裟あつかいされますが、なったことがある人なら分かるあの痛さ。
今日は「モモカン」について分かりやすく解説。
なぜあんなに痛いのか?なった時はどうしたらいいのか?をお伝えしていきます。
どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
モモカンの痛みの正体
打撲だと思われがちな「モモカン」ですが、正確には「挫傷(ざしょう)」というのが正しいかもしれません。
何が違うの?と思われる方もいるかと思いますが、打撲と挫傷は結構ちがいます。
打撲というのは、ぶつけた部分の表面の損傷です。
皮膚のすぐ下にある皮下組織と、筋肉の浅い層が傷ついている状態です。
それに対して、モモカンのような「挫傷」では、筋肉のより深い部分まで、広範囲に傷ついています。
筋肉の深い部分まで傷つく理由は、ももの筋肉が「2つの硬い物」のあいだに挟まれるからです。
ここでいう2つの硬いものとは、①相手選手のヒザなどと、②自分の大腿骨(ももの骨)です。
モモカンでは、ぶつかった表側よりも、筋肉の裏側の方(骨に近い方)が出血が強くなりやすいです。
損傷部のMRI画像でも、表側だけでなく、骨に近い奥側が傷ついている事が確認できるそうです。
強い損傷では、負傷後数日で内出血がはっきり現れる事もあります。
あとになって結構大きいケガだったと気づかされる場合もあるでしょう。
モモカン損傷の応急処置
モモカン損傷の処置の基本は、RICE処置です。
RICE処置については、学校の保健体育などでも習うと思いますが復習しましょう。
- Rest(安静):スポーツ活動を中止して、患部を安静に保つ。患部を動かさないよう固定する。
- ICE(冷却):患部のアイシングを行う。特に負傷初期には大切
- Compression(圧迫):患部にかるい圧迫を加える。痛みの緩和に有効
- Elevation(挙上):患部を心臓より高い位置にする。患部の充血を緩和する。
治療上も、患部を冷却したり伸縮性包帯で軽度に圧迫したりします。
また、装具や松葉づえを使って、患部に負荷をかけないようにする事もあります。
モモカン損傷に特有な措置として、負傷直後にももを曲げたままアイシングする事があります。
これは、膝を曲げる事で太ももの筋肉にテンションがかかり、出血カ所を圧迫できるという理由です。
ただ、選手にとっては結構つらい処置になるので、最近では推奨しないという意見もあります。
モモカンで気を付けるべき事は、合併症です。
コンパートメント症候群といって、ももの中の方で内部圧力が上がって、負傷の数時間後に激痛が生じる場合があります。
痛みが強くなり続けて「おかしい」と感じたら、早急に外科処置を受けられる医療機関を受診しましょう。
モモカン損傷の治療
治療面では、超音波治療器などは負傷初期から有効です。
深部の循環を良くすることによって疼痛(ズキズキ痛いこと)が緩和され、そのまま治療期間をとおして使用されます。
また、回復期には低周波治療や、温熱治療器(あたためる機械)が使われます。
治りかけの時期には損傷部にしこりが残り、患部が硬くなるため、血行を良くすることが大切です。
運動療法として、仰向けで徐々にひざを曲げるエクササイズを行います。
回復期の初期には、軽く曲げるだけでも痛いので、自分で出来る範囲で曲げ伸ばしをします。
治療が進むにつれ、徐々にひざを曲げられる角度が深くなっていきます。
治療の最終段階では太ももの筋肉をストレッチする事も出来るようになります。
治療期間中も合併症が起きてないか注意が必要です。
「骨化性筋炎」という合併症が有名です。
負傷時に内出血した血液が、筋肉の中に残って骨化する事があります。
早く治そうとして無理に動かすことも原因になるので、運動療法を急ぎすぎない事も大切です。
モモカン損傷のときのスポーツ復帰
ここまで説明した通り、一見たいした事がないケガに見えても、回復に時間がかかる事があります。
想像より時間がかかるので、知らない人は驚き、焦るかもしれません。
回復には個人差・ケガの大きさによる差があり、一概には言えませんが、一般的な治り方をご紹介します。
仰向けでヒザを100°くらいまで曲げられる頃には、跛行(かばった歩き方)なく歩ける感じになります。
そのくらいの治り具合だと、まだ痛くてスポーツ全般が行えないのが普通です。
練習中は、負傷した部分【以外】のストレッチや、脚を使わない基礎トレを行い、復帰に備えましょう。
痛みが出ない範囲で短時間のウォーキングを行って、少しずつ患部の血行を良くするのも良いでしょう。
無理して痛い運動を続けると悪化する事もあるので、焦りは禁物です。
仰向けでヒザを完全に曲げられるくらいになると、少しジョギングできます。
ダッシュはまだ無理です…
全力で走れるためには、「股関節伸展・膝関節屈曲」できる必要があります。
上の図のような状態です。
ケガをした局所がしこりのように硬くなって(硬結という)いて、最初は上のような体勢がとれません。
超音波などの物理療法やストレッチで、徐々に筋肉の硬さを和らげます。
上の図のようなストレッチができる頃になると、違和感はあるもののダッシュが出来るようになります。
それでもしばらくは、長い時間の運動をすると痛みが出るでしょう。
ちなみに私ががモモカン損傷をした時は、ページ1枚目くらいのあざが出るくらいの負傷程度でした。
それでも、完全に元どおりスポーツが行えるまでに3週間くらい掛かったのを覚えています。
治るまでの期間はもどかしいと思いますが、再負傷予防の観点から、無理をしない事が大切です。
プレーを離れている時間もアスリートにとっては大事です。
ケガが治るまでの間に何ができるか考えながら過ごしてみましょう。
ケガをした時の過ごし方については、こんな記事もあります。
お困りでしたらお役立てくださいませ。
まとめ
いかがでしたか?
出来るだけ選手目線で書いてみましたが、お役に立つ情報はあったでしょうか?
スポーツの治療やトレーニングに携わっていると、モモカンはよくみるケガです。
初めてなった人の多くは「治るまでこんなに時間がかかるとは思わなかった」と言います。
なので、最初の問診時に治療期間に対する感覚のギャップを埋める事からスタートします。
そのケガがあなたの競技生活にとってマイナスではなく、得るものがある躓きになる事を祈っています。
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この記事を書いたのは…
田中陽祐(たなかようすけ)
柔道整復師・スポーツトレーナー。にいさと接骨院×からだラボ 院長。
包帯やテーピングを巻くのが大好き。趣味はランニング、山登り。
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