スポーツで起こりがちなケガについて分かりやすく解説するブログ。
今日は、肘の脱臼についてです。
ケガをした直後から、治療期間にかけて役立つ内容になっていますので、どうぞお役立てください。

なお、ここで取り扱うのは、12歳以上の青年・壮年に起こる「肘関節の後方脱臼」についてのお話しです。
幼児における肘の亜脱臼「肘内障」について知りたい方は、下のボタンから移動した記事をご覧くださいませ。
肘の脱臼の特徴
まず肘の脱臼は、転ぶときに肘を伸ばした状態で手をついて発生する事が多いです。
競技種目では、ウィンタースポーツ等の「転ぶ」ことの多い競技で発生しやすいというデータがあります。

そして、肘の脱臼は12歳以上に多いです。
それより小さい児童期(12歳以下)では、手を衝いて転んだ場合、腕を「骨折」する事が多いです。
それと、肘の脱臼はとても痛いと言われます。
脱臼した腕の骨がまわりの組織を圧迫するためで、他の部分の脱臼より痛いとされます。
脱臼した時の対処
肘の脱臼が疑われるときはまず、安静にできる所に選手を移動させてください。
人が大勢いる中では、負傷者の心理的負担が大きく、緊張した状態になります。
出来るだけ近くの、人目のない場所へ、愛護的にゆっくり誘導してあげてください。

持続的に強い痛みがある事が多く、基本的にはすみやかに整復(関節をはめる事)した方が良いとされます。
神経・血管の損傷や、骨折を合併している事があり、その場合は現場での整復が望ましくない事もあります。
医療従事者の指示に従うようにしましょう。
医療機関を探す時は
脱臼の整復(関節をはめる事)は、診療科目でいえば整形外科が専門になります。
日曜・祝日などは休日当番医が設定されている事が多いので「自治体名+休日当番医」で検索してみましょう。
また大きな病院には夜間・休日外来があります。
利用する時は、当直で整復できる先生がいるか事前に確認します。
痛みの強いケガなので、救急車を呼ぶことを検討してもよいでしょう。
私たちも柔道整復師(接骨院)も脱臼の整復を行えます。
ただ、応急で整復を行っても、レントゲン撮影などの画像検査が出来ません。
肘の脱臼はさまざまな合併症のあるケガなので、接骨院で整復できたとしても病院には受診しましょう。
スポーツ現場で整復できた場合も、その後で早めに受診をした方が良いです。
治療期間中に注意すること
肘の脱臼後、1~2週間以内のあいだは関節を動かさないように固定する必要があります。
ブレースや金属副子(いずれも固定用具)で固定し、三角巾で腕を吊ります。

固定は2週間以内におさえた方が良いと言われます。
肘の関節は拘縮(動かさない関節が固まってしまう事)が起きやすいためです。
そのため固定中も、手先のこまかい運動や、腕を吊ったまま行える肩の振り子運動などを行った方が良いです。
治療中に起こりやすい合併症に「骨化性筋炎」というものがあります。
これは、筋肉の中で細かい骨化が起こり、患部周辺に痛みが発生するものです。
最初のケガが重症だった場合や、回復のための運動を急ぎすぎた時に起こります。
こういった理由もあるため、肘の脱臼後は定期的に病院を受診し、経過観察する事が大切です。
また、できるだけ関節を固まらせない努力や、逆に回復を急いで「骨化性筋炎」を起こさないようにする事も大事です。
治療期間中の自己管理が大事になるので、どんな事に気を付けたら良いかなど、担当医の先生によく聞いてみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
肘の脱臼は、見た目以上に大きなケガであり、負傷時の痛みがつよく、治療期間中の管理も重要です。
スポーツへの復帰にも時間を要する事になりますが、焦らずきちんと治しましょう。
この記事が少しでもお役に立っていれば幸いです。
他にもいろんな記事があるので、お気に召しましたら時間のある時にご覧くださいませ。

この記事を書いたのは…
田中陽祐(たなかようすけ)
柔道整復師・スポーツトレーナー。にいさと接骨院×からだラボ 院長。
包帯やテーピングを巻くのが大好き。趣味はランニング、山登り。
参考にした書籍はこちら↓
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柔道整復学・理論編(改訂第7版)
公益社団法人全国柔道整復学校協会 (監修), 公益社団法人全国柔道整復学校協会・教育支援委員会教科書部会 (編集) -
実践にもとづく骨折・脱臼の保存療法
竹内義享 (著), 堺研二 (著), 西川順三 (著) -
カラー写真でみる!骨折・脱臼・捻挫―画像診断の進め方と整復・固定のコツ (ビジュアル基本手技 2)
内田 淳正 (著)
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