身近なケガについて分かりやすく解説するブログ。
今回は、小さなお子さんの肘が抜ける「肘内障(ちゅうないしょう)」についてです。
できるだけ専門用語を使わず、分かりやすい解説を心がけております。
ぜひお役立てくださいませ。

肘内障って何?どんなふうに起こる?
肘内障(ちゅうないしょう)というのは「肘の亜脱臼」です。
「肘の関節の一部が外れている」と思って頂くといいと思います。
2~6歳のお子さんに多く発生します。
発生すると、お子さんは痛みのために「手を上げる動作」を嫌がります。
腕をダラリと下げたままにする子が多いですが、反対の手で腕を支える子もいます。
大泣きする子もいますし、来院時には泣き疲れ、眠ってしまっている子もいます。

発生する場面は様々です。
だいたいは、肘の関節に「引っ張る力」が働いて起こります。
たまに、転ぶなどして手をついた時に発生する場合もあるようです。
よくあるケースには、次のようなものがあります。
「外出中、子供を呼び寄せようと手を引っ張ったところ肘が亜脱臼した」
「着替え中、子供の手を服の袖から出そうとしたら肘が抜けた」などです。
強い力でなくても、ほんのささいな加減で肘が抜けることがあります。


肘内障では、橈骨(とうこつ)という骨の一部「橈骨頭(とうこつとう)」が抜けます。
通常は下の右図のように、橈骨頭は靭帯(じんたい)で覆われ、その中に納まっています。
そこに引っぱる力が働いて、橈骨頭が靭帯から抜けてしまうのです。
この現象は幼児特有で、まだ関節まわりの骨が発達しきっていない事によるものです。


小さなお子さんを診るうえで大切なこと
肘内障にかぎらず、小さなお子さんを診る時に大切なことがあります。
それは「様子をよく観察する」事です。
お子さんは、ケガがどんな風に発生したか、どうすると痛いか等、問診を行う事はできません。
親御さんやこども園の先生など、大人が見ていない所でケガをする事もあります。
周りの大人も負傷場面を見ていない場合、どんなケガかは観察や検査によって把握する必要があるのです。
肘が外れたと思っていたら違った!という事も
そのため「肘内障かな?」と思って来院されたけど、よく見てみたら違ったという事もあります。
例として考えられるのは「腕の骨の骨折」や「鎖骨の骨折」だった場合です。
治療をする上で、これらを注意深く見分ける必要があります。
お子さんが肘内障を繰り返していると「また外れたのかな?」と考えるのが自然です。
ただ、別のケガの可能性もあるので、決めつけはせずに早めに医療機関を受診する事をお勧めします。
ちなみに、これらの骨折は、転ぶときに手をついたり、肩を打って発生します。
なので「転んだあと手を動かさない」時は肘内障でない可能性も十分考慮しましょう。
その後どうなるか気にかかる保護者の方に
肘内障は、病院で整復(せいふく・関節をはめてもらう事)してもらえます。
わたしたち接骨院も整復を行えます。
整復した後は、他の脱臼とちがって、関節を固定したり腕を吊る事はしません。
念のため何日かは腕を引っ張ることを避けた方が良いと思います。

肘内障を起こしやすい子だと、小学校に上がるまでに2~3回発生する事があります。
肘内障をしやすいからといって、将来腕が変形したりはしないので心配いりません。
ちなみに、うちの長男と長女は一回ずつ抜けました。
長男は2歳、長女は3歳の時でした。
奥さんからは「パパもたまには役に立つね」とお褒めの言葉をもらいました。
まとめ
できるだけ専門用語を使わず、分かりやすく解説してみましたが、いかがだったでしょうか?
肘内障というのは、まわりに小さい子がいないと知る機会がありませんよね。
お子さんが生まれてはじめて知るという方もいます。
そんな親御さんたちに、この記事が少しでもお役に立っていれば幸いです。
他にもいろんな記事があるので、お気に召しましたら時間のある時にご覧くださいませ。

この記事を書いたのは…
田中陽祐(たなかようすけ)
柔道整復師・スポーツトレーナー。にいさと接骨院×からだラボ 院長。
包帯やテーピングを巻くのが大好き。趣味はランニング、山登り。
参考にした書籍はこちら↓
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柔道整復学・理論編(改訂第7版)
公益社団法人全国柔道整復学校協会 (監修), 公益社団法人全国柔道整復学校協会・教育支援委員会教科書部会 (編集) -
実践にもとづく骨折・脱臼の保存療法
竹内義享 (著), 堺研二 (著), 西川順三 (著) -
カラー写真でみる!骨折・脱臼・捻挫―画像診断の進め方と整復・固定のコツ (ビジュアル基本手技 2)
内田 淳正 (著)
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