2019年~2020年に端を発した「新型コロナウィルス感染症」は、数年間で社会を大きく変化させました。
まず、この感染症のために亡くなられた方や、そのご家族に哀悼の意を表します。
流行の収束とともに、クローズアップされたこと。
「もとの生活様式に戻ることの大変さ」です。
そのひとつが、心理的要因から「脱マスク」が出来ない「顔パンツ」という現象です。
今日取り上げる話題は、この「常時マスク」状態は、身体的にデメリットがないか?です。
私は、体のコンディションを整える仕事をしています。
そして、じつのところ、常時マスクはデメリットがあると感じるのです。
ポイントは以下の3点です。
- 顎関節(がくかんせつ)の動きが悪くなる問題
- 呼吸の浅さと、横隔膜(おうかくまく)のはたらきが悪くなる問題
- 姿勢を維持する機能の低下
とはいえ、今回は、文献や統計データに基づいた記事作成ではないです。
あくまで個人の所感としてとらえてくださいませ。

そして、もちろん医療や福祉に携わる職業の人は、業務中はマスクが欠かせないです!
人の命を守るために。
これは必要なマスクであるという大前提。
でも感染症対策やアレルギー対策でなく、心理的要因からマスクが外せない人もまだ沢山います。
その人たちの気持ちも分かりますが、問題提起としてみてもらえれば幸いです。
記事にしようと思ったキッカケ
「常時マスク」は大人より、子供に多いなと感じます。
特に中学生くらいのお子さんに多い。
男子もいるけれど、女子が多い印象。
本日(2025.07.09)は酷暑。
その中でも、マスク姿で自転車をこいで登校する中学生を見かけます。
もしかしたら、ぜんそくなどの持病のため、夏風邪をひかないように注意しているのかもしれないです。
ただ、それにしてはマスクをしている子の割合が高い。
もし心理的な要因からマスクを外せないとしたら、その気持ちも理解できます。
何も体に影響がなければ、それで良いわけですし。
ただ、結構増えてるんです。
中学生ぐらいのお客様で「首が痛い」とか「肩が痛い」といって来院するお子さんが。
そして、私はこれについて、結構マスクの影響も大きいかな?と感じています。
もちろん、スマホなどのデジタルデバイスの影響もあります。
なので、お子さんの首のトラブル増加は、コロナ前からの傾向ではあるんですが。
ただコロナ以降の傾向のあたらしい傾向もあるんです。
わたしの肌感覚なので、個人的な見解として聞いてくださいね?
マスクを外せない子供たちの多くが…
- 呼吸が浅い。
- 横隔膜(おうかくまく)の動きが悪い。
- アゴの関節が開きにくくなっている。
そんな傾向のあるお子さんなんです。
で、そういうお子さんは 話をよく聞くと、学校でも常時マスクをしている事が多い。
花粉症でも感染症予防でもないのに…
マスクをしている理由を聞くと、一番多い回答。
「なんか取れない」そうです、マスク。
彼らの世代は、学校生活の中でずっとマスクをしていたし、それが当たり前の”生活様式”だったのです。

上に上がってる3点(呼吸や顎関節の動き、姿勢)って、首や肩の症状に関係するの?
皆さんそう思われませんか?
じつは私、観察しているのです。
施術の際に。
それらをチェックしているんです。
なぜなら…
- 顎関節の動きが悪いと、首の不調に影響します。
- 呼吸が浅いと、横隔膜の動きが悪くなり、姿勢維持の機能も悪くなります。
なので私は、クライアントの症状の訴えをもとに、必要に応じてチェックしてます。
腹式呼吸ができているか、とか。
横隔膜を充分動かせるか、とか。
顎関節がちゃんと動いているか、とかを。
一般的な方からすると「ほんまでっか?」な主張と取れるかもしれません。
しかし、詳しくは後述しますが、これは徒手療法をしている人なら、割と同意して頂ける事が多い見解だと思います。
さて、話を「マスク」に戻します。
「常時マスク」については、大人がやっている分には、まぁ、まだしも良いのです。
自分で良し悪しを判断できるだけの情報へのアクセス能力があるからです。
あなたがここにたどり着いたように。

中学生くらいまでのお子さんは、「常時マスク」に弊害がある事に気づきません。
保護者の方がきちんと知ったうえで、教えてあげないかぎりは。
今の中学生は、小学校の頃に習ったのです。
学校では、食事中以外はマスクをつけて過ごすように。
学校での暮らし方として。
コロナ禍当時のマスク習慣は「クラスメイトと仲良くする」とか「不審な人にはついて行かない」のと同じだったのです。
三つ子の魂百まで。
だからこそ、「常時マスク」になっている子供たちの親御さんにも、その是非について一度考えて欲しいんです。
次の章から、常時マスクで起こる可能性のある弊害について解説します。
今回の記事はタネ本や文献にあたって書いているものではないです。
ただ、ネット上にある他の記事も複数通読したうえで、まったく突飛とはいえない内容だけに限定して書いてみます。
常時マスクだと、顎関節の動きが悪くなる?
常時マスクをしている人は、顎関節(がくかんせつ=アゴ)の動きが悪くなります。
アゴはどのくらい開かないといけないのか。
基準はこうです。
指をタテにした状態で、指3本分以上が口に入るくらいの開き具合。
これくらい開くと、下の動画のように耳の穴の下にくぼみが出来て、関節部に指が落ち込みます。
これもチェックしやすい基準です。
顎関節が開きにくいのには、スマホの影響もあるかもしれないです。
ただ、そこにさらに常時マスクをしていれば「ダブルパンチ」になります。
気づきにくいかもしれませんが、現代人は、口を開けられなくなっています。
常時マスクをしていれば、動画くらい口を開くことは極端に減ります。
マスクがズレてしまうからです。
そして、ここからが大事なこと。
顎関節と頸椎(けいつい=首の骨)は、体の力学的に密接に関係しています。
これについては、ここでの説明は省きます。
歯科や口腔外科の先生が、わたしより分かりやすい解説をしてくれています。
「顎関節 + 頸椎」で検索して頂くと、さまざまな記事がみられますので、検索してみてください。
さいきん私は施術する上で、顎関節のエラーに直面し、難渋する事が多いです。
首の症状を訴えているクライアントのアゴの動きが悪いことが多い。
この場合、首よりも先に、顎関節の改善アプローチから始める場合もあります。
頸椎の動きを良くしたり、首や肩まわりの筋肉をほぐすために、アゴの調整が要るという状況です。
そして「常時マスク」になっている人は、アゴの動きが悪くなっている事が多い。
あなたも、アゴや舌の動きがどのくらい機能低下しているか、動画を見ながらやってみてください。
常時マスクで、呼吸が浅くなる?
マスクは呼吸を制限します。
陸上競技(長距離選手)の「呼吸筋トレーニング」として、マスクが使われるくらいです。
「スポーツにおける呼吸筋トレーニング( 山地啓司, 山本正彦, 田平一行編著. ⦅TJ special file, 27⦆. ブックハウス・エイチディ, 2023.7.)」によれば、マスクは空気を吸いづらくする事で、呼吸筋が高めるトレーニングとして利用される、とあります。
それなら呼吸機能が高められていいのでは?
というと、そうはならないのです。
「常時マスク」をしている事は、呼吸筋強化ではない、別の変化を引き起こします。
それは「頻呼吸」です。
一回あたりの吸う量が減って、頻回(ひんかい)に吸うようになる。
浅い呼吸を、回数多くおこなうことで換気量をまかなうのです。
この頻呼吸についても、ここでの詳しい説明は省きます。
「頻呼吸+マスク」で検索してみてください。
分かりやすい説明が出てくると思います。
ここで取り上げたいのは、頻呼吸について説明ではないんです。
私の分野で言える事は、こうです。
呼吸が浅くなると、横隔膜をあまり動かさない呼吸の仕方になる。
そうすると、体幹の機能がうまく働かなくなり、姿勢を”ちゃんと”維持しにくくなる。
ごく簡略に言いますね。
しっかり息を吸うからお腹に力が入り、体幹が正しく使える。
そうでないと、いわゆる「腹筋が働いていない」状態になり、姿勢が悪くなる。
この姿勢が悪化している状態が、背骨、とくに首や腰に痛みが生じる身体コンディションなのです。
そして、首の痛みを訴えて来院する人のなかで「常時マスク」の人は、横隔膜の動きが悪い人が多い。
とくに中学生くらいの常時マスクの人にその傾向が強かったので、今この記事を書いているという経緯です。
ちなみにわたしは、呼吸の浅さと横隔膜の動きの悪さは、施術セッションの中でアプローチしています。
そうすると、他の手段より身体コンディションを改善しやすい事が多いです。
呼吸と姿勢、姿勢と顎関節、顎関節と呼吸
顎関節・呼吸・姿勢。
この3つのトラブルは、相互関係があると私は思っています。
(自分の体の感覚や、日ごろの施術から感じています。統計や研究データはないです。)
ただ、1対1での因果関係は、口腔外科や呼吸器科の分野などでも示唆されています。
で、今まで上げてきたような問題が「全部マスクのせい」かと言うと、そんな事はないと思います。
しかし、現に「常時マスク」の人を施術する時、顎関節や呼吸の問題をつよく感じます。
なので、首や肩・腰などにトラブルが生じていて、「常時マスク」が関係してるかもと思ったら…
しばらく取ってみると良いと思います。
この記事にたどり着いたアナタは、少なくとも「顔パンツ」は健康に良くなんじゃないの?と思っている。
もしくは、その逆で「体に悪くない」という根拠を探してこの記事に来たのだと思います。
私は少なくとも、運動器や運動機能をみて改善する専門家ではあります。
そして、日頃のお客様とのセッションの中で「常時マスク」は良くない影響がありそう、と感じている。
これに関しては、将来的に何らかの医学的データが出るなら、それは良いことだと思います。
でも、そういったデータ関係なく、自分の体と「対話」してみる事が大事。
そのうえで良くないと感じたら、やめてみたり、気を付けてみる事が大事なのではないでしょうか?
まとめ
貴方のまわりには、感染症やアレルギーや持病、職業的理由ではないけど、マスクを外せない人いませんか?
僕自身は、体にまったく影響のないものではないから、少しずつマスクを外していった方が良いかなぁと感じます。
ただ、自分の価値観だけで「マスクやめた方が良いよ」とは絶対に言わないです。
マスクがその人の「心の防波堤」になっている場合もあるから。
この記事も、問題提起だけしてみますね、ということ。
とくに首とか肩・背中に痛みやトラブルが出る人は、「常時マスク」の是非について、一度考えてみてください。
さて、いかがだったでしょうか?
今回は、私自身が気になっていた事を書いてみた回なので、何かの書籍や文献に準拠していません。
できるだけ突飛な理論や、論理の飛躍がないようにはしたつもりです。
が、何かありましたら、どうぞご教授・ご指摘くださいませ。

この記事を書いたのは…
田中陽祐(たなかようすけ)
柔道整復師・スポーツトレーナー。にいさと接骨院×からだラボ 院長。
包帯やテーピングを巻くのが大好き。趣味はランニング、山登り。