シンスプリントについて【トレーナーによる分かりやすい解説】


シンスプリント。

 

スポーツをやっていると、周りでよく聞くのではないでしょうか?

 

でも具体的にどういうことなのか聞かれると分からなくないですか?

 今日は、身近だけど実はよく分からない「シンスプリント」についての解説です。

 

スポーツをやっている人にとって実用的でに役に立つ情報をお届けします。

 

できるだけ分かりやすく解説しますので、最後までお付き合いくださいませ。

シンスプリントって何?

シンスプリントは、成長期のアスリートによくみられるスポーツ障害です。

 

特に陸上競技のトラックやロード種目などでよく発生します。

 

臨床上は特に、ロードを走るシーズン(秋や冬のマラソン・駅伝の時期)に多いように感じます。

シンスプリントの痛みが起きる位置
シンスプリントの痛みが起きる位置

シンスプリントでは、脛骨(けいこつ;すねの骨)の内側に痛みが出ます。

 

この部分の骨膜(こつまく;骨の表面にある薄い膜)に炎症が起きるためです。

 

すねの骨膜に筋肉が付着しているのですが、その筋肉が骨膜を引っ張ることが刺激になります。

 

多くの場合、骨膜の炎症は、すねの下1/3に発生します。

シンスプリントは一般的に治りにくく、長引く傾向があります。

 

それは、症状が発生しやすい10代中盤の選手に特有の事情が関係しているからです。

 

これについては、記事の後半で解説します。

シンスプリントの治療

シンスプリントの治療には、次のようなものがあります。

  • 患部を安静にする(スポーツ競技の中止やメニュー制限)
  • 物理療法(超音波や低周波)による痛みの緩和
  • アイシングなどのセルフケア
  • 体の使い方の見直し

基本的には、できるだけ早く練習をストップして医療機関を受診してください。

 

悪化させると治るのに時間がかかります。

 

そのうえで練習メニューや体の使い方、シューズの種類などについて具体的な見直しをします。

 

医療従事者やトレーナー・チームの指導者と一緒に考えていくと良いでしょう。

 

スポーツには段階的に復帰していくのが良いです。

 

具体的な判断基準は次の項目「スポーツ活動をどうするか」で解説します。

シンスプリントの痛み改善にはアイシングが効果的
シンスプリントの痛み改善にはアイシングが効果的

痛みの緩和のためには、アイシングは圧倒的にやった方がいいです。

 

一番簡単にできて、なおかつ治療効果は高いです。

 

練習後に行うのはもちろんですが、練習前のアイシングも効果的です。

 

症状改善後も、練習に復帰した直後などは、まだ痛みが出る事もあります。

 

そんな時に「事前アイシング」をしておくと痛みが出にくくなります。

 

もちろん痛みが出ない段階的なメニュー復帰が大前提ですけどね!

スポーツ活動をどうするか?

シンスプリントのようなスポーツ障害の際に、練習や試合への参加をどうするかは難しい問題ですよね。

 

もちろん完治するまで休むのが一番いいです。

 

でも「痛みが完全に消失して競技復帰したのに、またすぐに症状再発」なんて事もあると思うんです。

シンスプリントの症状が出るのは、成長期です。

 

中学・高校でのスポーツキャリアって実質2年くらいずつしかありません。

 

なので、症状が長期化したり、再発を繰り返して「練習できない期間」が増えるのは避けたいはず。

 

そんな時は、フェーズ(局面)にわけて症状を考えてみてください。

 

下のリンクの記事では、具体的なフェーズ管理の仕方を解説しています。

 

シンスプリントでお困りの方には役に立つと思うので、ぜひ見てくださいませ。

シンスプリントが起こりやすくなる要因

シンスプリントには起こりやすくなる要因がある
シンスプリントには起こりやすくなる要因がある

シンスプリントが起こりやすくなる要因には次のようなものがあります。

  1. 体のコンディション調整不良
  2. 地面への接地技術の未熟さ
  3. 走っている路面の問題(傾斜地や硬い路面でのランニング)
  4. シューズの劣化

シンスプリントは13~18歳くらいの選手で問題になりやすいです。

 

 

これは何故かと言うと、この年代にはスポーツ障害を起こしやすい身体特徴があるからです。

 

成長期の選手の身体的特徴については、こちらの記事をどうぞ。

10代の選手に特有の「柔軟性低下」

上記の「①コンディション調整不良」について、ひとつだけ分かりやすい例えをあげましょう。

 

意外かもしれませんが、10代の選手は、大人よりも体が硬い傾向にあります。

 

これは何故でしょうか?

 

大人と比べると、中高生の選手は筋肉量が少ないです。

 

10代の子たちは手足が細くすらっとしている選手が多いですよね。

 

骨の長さは大人に近づいてきていますが、大人よりも少ない筋肉量で同じ長さの骨を動かす必要があります。

 

大人と同じ運動をしていても、10代の選手の筋肉にかかる負担ははるかに大きくなります。

 

必然的に、成長期の選手は筋肉が硬くなり、体の柔軟性が低下しやすいのです。

10代の選手は大人よりも柔軟性が低下しやすい
10代の選手は大人よりも柔軟性が低下しやすい

真剣にスポーツに取り組んでいる子ほど、幼児期・学童期のような柔軟性を維持できなくなってきます。

 

成長期の選手のコンディション維持は大人よりはるかに難しい。

 

体の状態をチェックして柔軟性に問題がある場合は、改善のためのプログラム提案が必要です。

接地スキル(地面反力の受け方)の未熟さ

②の「接地技術の未熟さ」も、シンスプリントの発生にとても関係が深いです。

 

接地技術とは、単に「どういう風に地面に足を着くか」という話だけには収まりません。

 

少しむずかしい話かもしれませんが「地面反力(Ground Reaction Force)」の話です。

 

走るためには、お尻足首3関節で同時に地面を押します。(トリプルエクステンションという)

 

地面を押した「反作用」を骨盤や背骨に伝える事で「走る」事ができます。 

 

地面を押す位置は「体より前」でも「体より後ろ」でもありません。

 

「へその真下」です。

 

これが足に負担が少ないと言われる「ミッドフット接地」です。

 


上記の図はウォーキングの正しいフォームについて書いた記事からの抜粋です。

 

参考になるので、もしよろしければ合わせてご覧くださいませ。

 

さて、シンスプリントが再発しないように、治療の中で地面反力を上手に得るためのトレーニングを行います。

 

へその下に接地して地面の反力を受けるスキルです。

 

その基礎にあるのが「スクワット」です。

 

トレーニングの導入の際に「その選手がスクワットの動作が苦手」である事が判明する事が結構あります。

 

そういった場合には、体の'動き'を修正してから、接地スキルのトレーニングに移ります。

 

動作を修正する事で、痛みの緩和だけの治療よりも治療成績が良くなると治療の現場で感じます。

治療上みているとシンスプリントの選手は上手にしゃがめない場合が多い
治療上みているとシンスプリントの選手は上手にしゃがめない場合が多い

シンスプリントの選手にありがちなフォームのエラー「ニーイン」

また、シンスプリントの選手にありがちな接地のエラーに「ニーイン」があります。

 

ニーインとは、ランニング動作時に膝が内側に入ってしまうことを言います。

 

詳しくはこちらの記事を読んでみてください。

このニーインをチェックして改善する事も、治療の成果を上げるうえで大切です。

 

ニーインが見られる場合には、姿勢と動作をコントロールする運動療法やトレーニングを行います。

 

上のリンクで詳しく解説していますので、ここでの解説は避けます。

 

もしよかったらあわせてご覧くださいませ。

シンスプリントの症状改善のために

シンスプリントは、一般的に治りにくく、症状が長期化しやすいスポーツ障害です。

 

ただ、それは先述のようなコンディション不良や、走るスキルの未熟さが根本にあるからです。

 

動作のエラーを抱えたまま練習する事が障害に繋がります。

 

治療の成果を上げるためには、動作は「スキル」であり改善できると認識することが第一歩。

 

 

 

10代の選手の多くは、まだ専門的な動作スキルのトレーニングを受けたことがありません。

 

故障をキッカケにスポーツスキルについて考えてみて頂けると、トレーナーとしてこの記事を書く価値があります。

 

もしよかったら、こちらの記事も読んでみてい下さいね。

まとめ

いかがだったでしょうか?

 

すこし難しかったとしたら恐縮です。

 

私自身、十数年に渡って多くのシンスプリントの選手を見てきて、感じることがあります。

 

それは「痛みを緩和する治療だけではシンスプリントは治りきらないんだよなぁ」という事です。

 

体の状態やランニングスキルに生じているエラーを修正しないと中々治りません。

 

そして「選手の体に生じているエラーは十人十色」という事も言えます。

 

これは大げさではなく、本当に100人いたら100通りの改善方法があります。

 

誰にでも当てはまる超優良メソッドはありません。

そこで医療従事者とチームのコーチ以外に「トレーナー」という立場の人がいるべきだと感じます。

 

もしシンスプリントが治らなくて困ったら、スポーツのスキルまで指導してくれる医療機関を選んだ方がいいと思います。

 

または、もっとトレーナーと言われる職種の人を頼ってください。

 

私自身もトレーナーとして治療家として、もっと選手の皆さんの役に立つように勉強したいと思っています。

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この記事を書いたのは…

田中陽祐(たなかようすけ)

 

柔道整復師・スポーツトレーナー。にいさと接骨院×からだラボ 院長。

包帯やテーピングを巻くのが大好き。趣味はランニング、山登り。



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